「ただいま」
「へぇ。旅に出ていたんですか?」
「ええ。戻るつもりは無かったんだけどね」
苦笑しながら私は荷物を降ろす。
「この世界が好きで好きでたまらないからいつまでも居たかったけど、それはできないでしょ。
だから旅に出ていたの。自分を見つめなおす旅にね。
いろいろなものを見たわ。いろいろな出会いもした。
だけどね、私にとって帰る場所はやっぱりここだったのよ」
懐かしそうに周りを見渡す。
「ここは変わらないわね。どんなに絵が綺麗になってもどんなに音が良くなってもこの場所は絶対に変わらない」
私の断言に相手も賛同する。
「そうだね。ゲームは進歩する。
だけど、人がゲームをする以上この最初の画面だけは変われない。
恐れ、不安、希望、野望、歓喜…全てがこの画面の中で光っている」
「ほんとうね。貴方はこの世界で何を望むの?」
「さぁね。君は?」
私は笑って答えた。
「世界が違えども、ゲームが違えども私は私。だから、結局前と同じ事をするんでしょうね…そのときは…」
「君が悪ならば僕が敵に回るかも」
その真面目な言葉に思わず笑ってしまった。
「私は悪にはならないわよ。
かといって、善なんてなる気もないわよ。
ただ傍観するだけ。それが私のスタイル」
二人ともまた荷物を持って入り口に進む。多分もう二度と会うことは無いだろう。
「おわかれね」
「そうだね」
「幸運を」
「君も」
そして私は新しい世界へ舞い降りる。
あの懐かしい夢の世界へ。
「ただいま」