「は?」


 最初に出た声がそれだった。

 だって、来た依頼ってのが、「マヤになってくれ」という突拍子も無いものだったのだから。


 私は一応歓楽街で仕事をしている。娼婦と言ったら娼婦が怒るだろうから言わないでおこう。

 なにしろ、魔族相手に数え切れないほど交尾出産してきたから。

 しかし、よりにもよって蟻ときたものだ。

 まてよ……それじゃあ生むのは卵??

 依頼人を見てみる。

 どの職だろう?私は知らない。こんな真っ白ミニスカートな職業。

「報酬はいいですよ。ビタタCいくらでも」

 怪しい。凄く怪しい。凄まじく怪しい。

 ビタタCと言えば、超がつくほどのプラチナチケット。数枚もあれば家が建つ。

「なんか詐欺っぽい話ねぇ……」

「これならどうです?」

 真っ白ミニスカートな女性の依頼人は目の前にビタタCを広げて見せる。

「…………偽者じゃないでしょうね?」

「本物ですとも。よろしかったらこれらは前報酬で差し上げますよ」

 結局受けることにしたが、私はそれを後悔する事になる。


 指定された場所にポタをして飛んでみたら、そこは私が見た事が無い遺跡だった。

「アリーナですよ」

 実に馬鹿丁寧な説明をしてくれる依頼人。

 アリーナ?そんな場所あったかしら??

「では、これをつけて貴方はマヤになってもらいます」

 差し出されたのはマヤの下半身。

 足は八本。蟻は六本のはずなのだが……

「そうです。貴方に孕んでもらいたいのは蟻だけじゃなくてビタタも入っているのですよ」

「一つ聞くけど、『本物の』マヤは何処に行ったの?」

 私の質問にまるでどこかのきめ台詞(○ばっています)スマイルでこうのたまわったのだった。

「本物のマヤも生んでもらうんですよ。貴方に」

「待ちなさいよ!それじゃあ……」

 私の言葉の先を読んで、彼女はあっさりと言ってのけた。

「ええ。もうアリの巣の種は種として崩壊しているんです」

 と。

 いろいろな疑問はひとまずおく事にして、マヤの下半身の中を見る。

 足はひざをつく形で中に直され、固定のためだろうか太く長く生々しく突き出された肉棒が二本座席に鎮座している。

「何?これ?」

「卵を大量に孕むのはこの下半身なんですけど、その為には人の体では大量に生めないんですよ。

 こいつで卵子を取り出して卵に変換します」

「精子は?」

「人ので構いませんよ。ほら。前に精液取り込み口があるでしょ。

 ここからどんどん精液を取り込んでください」

 またひどく人のものと良く似た生々しい精液取り込み口が前にある。

「後ろの肉棒は排泄物を排除するためです。

 快感等の視神経は全てこの肉棒と被って頂く頭部で繋がって共有できますから」

 ひどくうっとりとした感じでこの依頼人が説明する。多分経験者だな。きっと。

「分かったわ。で、期間は?」

「貴方が飽きるまで。

 それをつけている間は蟻やビタタは貴方に従いますから。

 飽きたら適当に冒険者にやられてください。それで下半身は外れますから」

 このアバウトさといかがわしさに眉をひそめるが、こんな生々しいものを見せられてやめるほど私は自制心ないし……

 服を脱いで裸になる。いつものマタの首輪とロザリオだけの姿になってマヤの下半身にまたがる。


 ぬちょっ


「あっ……生暖かい…うわぁ…ぬちょぬちょしてるぅ……」

 足をマヤの下半身に突っ込む。

 ひざをついてこのまま腰を沈めると例の肉棒二本がお尻に当たる。

 中が粘液で濡れているからこのままあっさりと入りそう。

「じゃあ…前から…んっ……ぁ…ぁぁ……」

 意外とあっさりと入る。そのまま後ろも咥えこむ。

「んっ……太いけど……入らないほどじゃない……っ…」

 自分の淫らで爛れた過去をちょっと振り返って鬱になりかかるが、肉棒のこすれ具合にはけっこう満足。

 頭部をかぶって感覚を共有させる。

「あ、言い忘れてましたが」


 ぶちゅっ!


「ひぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!なにっ!なにっ!なんなのぉぉぉ!!!」

 感覚が繋がった瞬間に肉棒が膨らんで子宮の奥に刺さった。

「その肉棒膨らみますからって……聞こえてないでしょうね。

 では、がんばってくださいね。出口はそちらですから」

 クスクス笑いながら依頼人は去っていった。


 ああ、あつい。あつい。下半身があつい。

 肉棒が痙攣する。

 ぴくぴくうごめくたびに電気が走るように快感が全身をかけめぐる。

 ほしい。ほしい。肉棒が欲しい。

 ゆっくりと八本足を動かす。

 そのたびに肉棒が私を快楽の海に突き落とす。

「ああああああああああああ……」

 口をだらしなく開けて、よだれが胸のロザリオに落ちる。

 前の肉棒が子宮いっぱいに広がって卵子をどんどん取り込んでゆく。

 後ろの肉棒は排泄とか言う割に、しっかりと中で膨らんで前の肉棒と交互に私を突いてよがらせる。

「ほしい…肉棒が欲しい……

 卵……卵を産みたい………私は……マヤ……」

 のたのたと私は淫らに腰を振りながら、マヤとしてありの巣に降臨した。


 最初に目に付いたのは蟻を焼いていたマジシャンだった。

 両腕が刃になる。それで十分だった。

「ファ…ファイヤ……」

 遅い。私が両腕を彼に突き出す。

 もう彼は動けない。けれど殺すつもりはない。

 足で両手を踏みつけて押さえて、その刃でズボンを切り裂く。

 露出した下半身に舌を這わせた。


「んっ……!…やっ……やめて……んぁ…」


 れろっ…れろっ……れろれろっ……

 卑猥な音と舌が萎えた肉棒を大きくする。

 私はビタタの一匹を呼んで蜂蜜を受け取って肉棒にこすりつけた。

「くっ……やめてくだ……で…でる……」

 出してもらったら困るので、肉棒の根元を握り漏らさないようにして、下腹部の精液取り込み口に肉棒を導いた。

「あああああああああっっっっ!!!」

 歓喜の声が聞こえる。これは…私?

「うわぁぁぁああああああ!!!」

 下にいたマジシャンが痙攣しながら精液を私に注ぎ込む。けど、まだたりない。

 いっぱい。いっぱい。いっぱい精液を注ぎ込まないと。

「ああっ!もっと…もっと……もっとだしてぇぇ!!」

 卑猥におねだりを繰り返して腰を振って更に精液を搾り取る。

 途中で精液が止まったので見たら、マジシャンは精液を出し尽くして枯れていた。

「もっと………もっと精液欲しい……卵を産まないと………」

 いやらしく涎をたらしたまま次の獲物を目指して私は洞窟を彷徨った。

 少しずつ、人では無く精液を求めて卵を産む人形として、人の心を失っているのに気づかないまま。


 その後、10人ほど男を狩って、精液をかき集めた。

 私の子宮の中で作られる卵子は作られるそばから肉棒を通って下半身に送られて精液と受精しマヤ下半身の特殊な液によって卵となる。

 その行為全てが私にとっては快感だった。

「できるぅぅ!!卵ができるぅぅぅ!!もっと…もっと卵を作らないと……」

 蟻たちに蜂蜜を運ばせて栄養を取る。壷に入れるのすらまどろっこしいので蟻たちから直接浴びるように舐め取る。

 体中蜂蜜だらけ。下半身は精液だらけ。そして地面には搾り取った男達。

 下半身は作られた卵で膨れ、快感は絶え間なく私の理性を削り取る。

「はぁはぁはぁ………はぁはぁはぁはぁ……」

 お腹が膨れる。肉棒が私を突いてせがむ。

「た…卵……卵を産まないと……はぁはぁはぁ…」

 歩くたびに卵が下半身で揺れ、それが肉棒によって伝わる。

 これ以上の卵子を受け取らないようにぴったりと子宮一杯に肉棒が膨れる。それは外から見たら私自身が孕んだように見える。

 目がとろんとして、口をだらしなくあけて、ロザリオが蜂蜜と唾液まみれで揺れる。

 お腹とヤマの下半身がいやらしく膨れている。

 はやく……卵を産まないと……女性の中に。

 私はアリ達に命じて、女性を生きたまま捕らえるように命じて、卵が安置されている場所に向かう。

 その姿は威厳あるアリの女王というより、快楽に狂った牝でしかなかった。


「ぁ…ぁぁ……」

「いや…いや……」

「たすけて…おかあさん……」

 集められた数人の女性達。そのほとんどがレベルが低い初心者達。

 一人のマジ子に近づく。私の淫靡な雰囲気に気づいて泣き喚くマジ子。

 両手両足を足で踏みつけて四肢を広げる。マジ子の衣装など裸に近いからあっさりと剥ぎ取る。

「いやっ!やめてっ!やめてぇぇぇ!!

 ああああああああああああああああっっっっっっっ!!!!!」

 喚くマジ子を気にせずにマヤの下半身の先っぽをマジ子の秘所にぶちこむ。マジ子の叫び声と共に秘所から血がたれる。

「あああ……でるっ……卵が出るぅぅ……」

 卑猥な笑みを浮かべてマジ子の子宮に卵を産み付ける。

「ああっ…いやぁ……何かはいってくぅ……いやぁぁぁ……」

 泣きながら、体を震わせてマジ子が卵を受け止める。その目にはもう光はなかった。

「……ああ…おなかが大きく…あはっ…あはっ……」

 卵は彼女の中である程度大きくなって産み落とされる。

 彼女たちは私の中で作られた卵を育てるための苗床でしかない。

「いやっ!いやっぁぁぁ!!」

「助けて…お願いだから……いやっ…卵を産み付けられるのはいやっ!」

 女の子たちが懇願するが私は聞くつもりはなかった。

 そして、最初のマジ子と同じように、お腹を膨らませた壊れた人形の苗床に卵を産みつづけた。


 人として意識が戻ったのはすべてが終わってからだった。

 そう。ふいに獣から人に戻ったようなそんな感覚。

 枯れ果てた男達。 

 お腹を膨らませて光を失った目で見つめる女たち。

 汁だらけでマヤの下半身に乗っている私。


「こ、これ…私がやったの?」

「ええ。貴方がやったんですよ」

 何時の間にか依頼人がいた。気配など感じなかったのに。

「いかがですか?魔物となって人を犯す快感は?

 もう、貴方が犯した男女は精神が壊れて元には戻りませんよ」

 すごく厭らしく笑う。妙に腹が立った。

 そして分かった。彼女が私の意識を戻したのだと。

「こういう壊れた人たちは需要があるんですよ。『人形』としてね。

 貴方が生んだ卵からアンドレやビタタ、場合によってはマヤが生まれるんですよ。

 貴方は、見事に仕事をこなしてくれた」

 ふと思い出した事を尋ねる。

「前に言っていたわね。『蟻の巣は種として崩壊している』と。

 それは人間のせい?」

「ええ。そうですよ。

 人間が何も考えずに蟻を焼きまくるからここはもう種としては終わっている。

 それを修復するのが『管理者』の仕事です」

 その言葉を聞いてすべてに納得がいった。

 管理者。世界を管理しあるべき姿を導く人間たちの集団。

 場合によっては神と呼ばれる者たち。

「……人よね。一応?」

「まぁ、『神』と呼んでもらっても構いませんよ」

 人のくせに神と呼べとはまた傲慢な。

 あんたなんか『髪』で十分だ。

「最初は前任者が真面目にやっていたんですが、私達の代になって人形達のビタタ大量虐殺で種そのものが崩壊しましてね。

 さらに世界システムにも支障が出て、一度全てをご破算にしようと考えたのですよ。

 まぁ、人形達は需要があるんで今はそっちを作る事が仕事ですがね」

 覚えている。

 主に商人市場でその衝撃があって多くのまーちゃんが首を吊ったあの事件はあまりに生々しかった。

「世界は誰かが管理しないと常に崩壊してしまうのです。

 我々はその管理をする事でこの世界を救っているんですよ。

 素晴らしいと思いませんか?」

 そうか…やっと分かった。

 商人市場で価格を操作する何者かの手。

 犯罪として糾弾されながらいっこうに減らない心無い人である「人形」達の存在。

「つまり私は、世界の秘密を知ってしまった分けね」

「ええ。この世界の隠された秘密へようこそ」

 とてもいやらしく彼女は笑った。多分私も同じぐらいいやらしく笑っているのだろう。

「そういえば後払いの報酬がまだだったわね」

 マヤの体をチェックする。まだ動く事を確認して腕に刃を貼り付ける。

 何度も何度も聞いたおとぎ話。悪大臣の企みに乗った者は最後には……

「ええ。与えますとも。永遠の快楽を!」

「ひゃあああああああんんんんんんん!!!!!」

 突如前後の肉棒が暴れだし体には快楽の波が私を打ちつける。

「ああっ!だめっ!!そんなに動いちゃ……あああっ!!!」

「人を裏切って魔物を孕む事が許されると思っていたのですか?

 そんな世界のルールを修正する為に貴方にはマヤになってもらいましょう。

 うれしいでしょ?永遠に貴方は犯されて、卵を孕んで、卵を女性に産み付けるんですよ。

 貴方の望んだとおりに永遠に快楽を貪ってください」

 とても気持ちよさそうな声で管理者たる彼女は笑った。

 すべてを支配する絶対者としての笑み。

 全部仕組まれていた事に気づいても、この快楽があまりに強すぎる。

「くぅぅぅぅ!あひぃぃっ!!よくも……だまして……あああっ!」

 肉棒は容赦なく私を突き続け、頭部からは脳に直接快感が送られる。

 気づいてみたら、体中にマヤの下半身から触手が出てて私の乳首を弄る。

「感謝してほしいですね。

 普通の人は意識など戻さずにそのままマヤにしてしまうのですからね。

 まぁ、どこまで意識がもつのでしょうか」

「ううううっっ!!だめっ…壊れるっ……壊れて…いっちゃ……」

 堕ちると思った。

 今までの思い出を忘れて快楽の中に堕ちると……

 喘いだ弾みでロザリオが揺れる。


 真っ白になった頭の中。

 何故だか、バフォと悪ケミと子バフォが頭に浮かんだ。


「!!!」

 驚愕と激痛に歪んだ管理者の顔。

 その胸の下に私が突き出したマヤの刃が突き刺さっていた。

「はぁはぁ……覚えて…おく…ことね……

 ひ…と……は……愚かでも……その思いは…神すら超えるのよ……」

 マヤの快感はもう途切れていた。

「馬鹿なっ…この私が……全能たる管理者たる私が……」

 血を口元から吐き出しながら管理者は痙攣して何か続きを言おうとしてそのまま砂のように消えていった。

「んんっ…んあっ!!」

 頭部を外して、マヤの下半身から這い出る。

 もう立つ力も無く這うように蟻の巣からはい出て砂の上に裸のまま倒れこむ。

「はぁはぁはぁ……もう動けないわよ……」

 手がロザリオに伸びる。

「…貴方達のおかげよ……貴方達の馬鹿な夢のおかげ……

 ……管理者すら振り切ったんだから……絶対叶えなさいよ……

 人すら裏切って…管理者すら振り切って……罪と後悔は全部私が受け持ってあげるんだから……」

 私は通りがかりのパーティに助けてもらうまで、意味の無い事をロザリオに向かって話しつづけた。




 ちなみに、前払いでもらったビタタカードは帰ってみたら消えていた。

「もしかして……ただ働き?」

 その後の狂乱についてはあえて書かない事にする。




あとがきみたいなもの

 触手もののリクエストに出した回答が蟻。我ながらすべらしいひねくれ具合(苦笑)。

 これを書くために昆虫図鑑をひたすら見まくったのは内緒。