夜明けのプロンテラ。歓楽街の一室。

「ん……」

 体が重たい。そしてこの季節にしては妙に暖かい感触でバフォメットは目を覚ました。

 いつも見慣れた黒い体毛では無く人間の体。

 視野に広がるのはソファーの上に寝ているバフォとバフォの布団よろしく覆い被さっている裸のママプリ。

「そうか。昨日はここに来たんだった」

 ぽつりとつぶやく。

 人の姿に化けたのは本来の姿だと部屋に入りきれないのと、人との余計な争いを避ける為。

 体は人だが、一部分はもとの肉体のまま。我ながらなんと都合がよい体と苦笑したくなる。

 少しずつ頭が冴えて来る。

 薄明かりに匂う男女の情交の匂いは濃く、まだママプリとの接合部からはその名残がたれている。

 そもそも二人がソファーで寝ているのも、バフォが撒き散らした白濁液でベッドがびちょ濡れという原因がある。

 ママプリを起こさないようにバフォは自分の分身を外して鼻をかく。

「……洗濯…大変だな……」

「いっしょに洗ってよね♪」

 これだから女というのはという驚きを完全に隠してママプリの髪をぐしゃぐしゃとかき回す。

「いつからおきていた?」

「こんな太いもの入れたまま眠れる訳ないでしょ」

「の、割には昼寝をする猫のように動かなかったではないか」

「だって、貴方のものですもの。離したくないから……」

「……」

 こうやって裸で、しかも自分の腹の上で胸を揺らして甘えるママプリは反則だとバフォは思った。

 なにしろ無駄に体力だけはあるのだ。何度でも何度でもママプリの中に自分の精を吐き出したくなるのをぐっとこらえる。

「いや、まて。今日はひたすら交わる為にきたわけではないのだ」

「え〜?」

 甘えた声を出すママプリだが目は甘えていなかった。

「少し、未来のことを話したいと思ったのだ」



「転属願?」

 バフォが出した書類に魔族を統べるLoDは眉をひそめた。

「はい。元々の拠点たる迷宮の強化を図りたく」

 ただ静かに頭を下げるバフォに質問するLoDの口調は冷たい。

「お主の迷宮は人間どもに近すぎないか?

 最近は砦もできて正直な所人間どもの王都を叩く事すら不可能になりつつある。

 GHにて戦力を再編する方が理にかなっていると思うが?」

「いえ。だからこそ迷宮の戦力強化を急ぎたく思っているのです。

 最近の人間の一部は既に我ら魔族すら上回る力を有し、このGHも彼らに激しく攻撃されました。

 敵王都近隣から我ら魔族勢力が一掃されるとその戦力は全てこのGHにやって来る事でしょう。

 そうなった時、率直な所我らの戦力ではこのGHを守りきれませぬ」

 GHの指揮官格であるバフォの率直な意見にLoDは顔色を失った。

「……認めなければならぬか……我らが負けつつあるという事を」

 苦々しく吐き捨てるように言ったLoDの言葉をバフォは拾って進言する。

「戦である以上、勝ち負けは仕方ありませぬ。

 ならば、戦に負けるとして我ら魔族の生存の為の手を考えねばなりませぬ」

「時計塔やお主のプリーストはその布石か?

 我が知らぬと思っていたのか?」

 LoDの殺気のこもった言葉に固まるバフォメット。だが、LoDはバフォに手を出そうともしない。

 バフォは恭しく頭を下げたまま、LoDの次の言葉を待つ。

「バフォメット。我らは千年前に神を追い払った。

 我に言わせると、人など神の奴隷にしか過ぎないと思っていた。

 それがどうだ!

 いまや人は魔族を滅ぼそうとしている。何故だ!!!」

 LoDの怒声がGH中に響く。

「力も魔力も繁殖力も寿命すら人は魔族に劣るのに何故我らは負けるのだ!!」

 バフォは何も言わない。言っても仕方ないと分かっているから。

 バフォが気づいた人の力をLoD言ってもLoDは理解できないだろう。彼は強いから。

 何も言わぬバフォを見つめながら、LoDは息を整えて王者らしくバフォに命じた。

「よい。GH転属を許す。

 時計塔にも戦力を派遣しよう。お主のプリースト、今度紹介しろ」

「御意」

 こうして、バフォメットのGH勤務は解かれ迷宮指揮官として赴任するまでの間、その足でGHからママプリの所に転がり込んだのだがその事を彼女は知っているはずもなかった。



「未来?」

 朝日を浴びながら湯浴みをするママプリの体は美しかった。

 大量に出された精のためお腹はまだ膨れ秘所からは白濁液が湯に広がってゆくがそれもいつもの事でその湯で髪や体についた白濁液を洗い落としてゆく。

「GHの任を解いてもらった。また迷宮に戻ることになる。

 ここから迷宮は近い。よかったら……三人で……」

 そこから先の言葉をバフォは言えない。

 魔族の長の一人も男である以上、女には勝てないのだろう。

 そんな姿を見て思わず微笑んでしまうママプリは優しく首を振った。

「ありがとう。けどそれはまだまだ先の夢でしょ。

 人も魔族も、まだ多種族を受け入れられるほど優しくはなっていないわ」

 バフォを湯船に導いて、バフォの背中を豊満な胸で洗いながらママプリは続けた。

「私は、この仕事を始めてから人から追われたわ。人の敵になった私を人は許さなかったのよ。

 そのせいで幼い悪ケミたんと離れないといけなくなった。

 悔しいけど……人は奢っているわ。魔族に勝っている事を自覚しているのよ」

 石鹸を胸につけてバフォの背中を泡だらけにしながら、手はバフォの前に伸ばしていた。

「一緒に暮らすのはいやか?」

「たとえGHでも今の人からは悪ケミたんを守りきれないわ。彼女を魔の世界に踏み込ませるのならば」

 親子三人。いや、一族郎党そろって迷宮で暮らす。

 悪ケミたんと遊ぶ子バフォ達、それを眺めて笑うバフォとママプリ。

 かなえられる夢。けど、かなえたら人によって壊される夢。

 生存競争から蹴落とせる相手と仲良くする人を許せるほど人は優しくはない。

 魔族が種としての性能で人より勝りながら人が勝ちつづける原因。

 同属すら排除するほどの敵に対する容赦の無さとその裏返しの同朋意識こそが人の、種として動く人の最大最強の武器だった。

 だからこそ、人の世界に残してきた悪ケミは人の社会に保護されながら生きていけるのだ。

「勝てないはずだ」

 背中のママプリの胸の刺激を楽しみながら、バフォはたまらず天井に言葉を吐き出す。

「人が他者に対して優しくなれるまで待ちましょう。

 貴方も私も悪ケミたんも時間だけならいくらでもあるのだから」

 ぽたりとバフォの背中に当たるママプリの涙。

 ママプリが背中ですすり泣くのを止めるまで、バフォはその背中を貸してやることにした。



『お誕生日、おめでとう〜♪』

「れ、礼なんて言わないんだからっ!嬉しくなんて無いんだからっ!」

「主はこう言っておるが…祝って貰えて嬉しいのだ。」

 悪ケミたんの誕生日。それを遠くから見つめる親馬鹿二人。

 彼女の安全を考えると入れないからそっと見守るだけ。

「大きくなったわね…あの娘も」

「うむ…お前に似て、綺麗になった」

 ふと漏らす本音にママプリは思わず笑ってしまう。

「フフッ…見た目は私譲り、性格はアナタ譲りって所かしら?」

 首にかけたロザリオがゆれ、バフォのマタの首輪に当たる事などママプリは別に気にしない。

「…我はあれほど強情ではないぞ?」

 できるだけ威厳をつけて返事したつもりなのだが照れているのがバレバレなバフォ。

「さぁ…どうかしら…?」

 その姿がおもしろくてまた笑ってしまうママプリ。

 バフォに抱きついて不意に言葉が漏れる。

「あの子達、私たちよりも幸せになれるかしら?」

 少し考え込んでからバフォが口を開く。

「それは無理だろうな…我らと同じ位なら、幸せになれるかもしれないが」

「何気にのろけてるの、それ…?」

 たまらないように笑い出して、バフォから離れるママプリ。視線は再び悪ケミ達の方に。

「幸せになりなさい。悪ケミたん。

 あなた自身の力で。

 たとえ世界が敵に回っても、

 私達はいつまでもあなたを見守ってあげるわ」

 悪ケミには聞こえない祝福を捧げるママプリを見て、バフォはやっぱり聖女なのだなとふと思った。

「幸せになるよ。悪ケミは。

 何しろ私達の自慢の娘だ」

 悪ケミには聞こえない断定をしているバフォを見て、ママプリはやっぱり人と魔族は共存できると思った。

 けど、二人して口に出したのは別の言葉。

「まだ……迷宮に戻らなくてよかったのよね?」

「なぁ……もう一人娘が欲しいと思わないか?」


 きっと来ているだろうと二人を探しに来た子バフォは路地裏で口付けをしているバカップル二人を発見して、そっとその場を後にするのでした。

 また兄弟(妹かも)が増えるなと確信しながら。




あとがきみたいなもの

 参考文献 まず「 【18歳未満進入禁止】みんなで作るRagnarok萌えるエロ小説スレ 六冊目【エロエロ?(*ノノ)】 」のAbyssたん(*´Д`)ハァハァ 様の作品群をお読みする事をお勧めします。

 これはそのお礼に書かれたものです。

 あとエロスレなのに直接的なエロはありません。

 その代わり、情事後の描写に力を注いだつもりです。

 ……いや、やりだしたらやりだしたで止まらないし。この二人。

 改めて整理してみると、単体での読み物が少ないこと。(苦笑)

 ママプリは他の人々の萌え力によって構成されています。(まて)